
伝統的工芸品とは、法律(伝産法)にもとづいて経済産業大臣が指定した工芸品です。要件は、日常生活で使う、主な工程が手作り、およそ100年以上続く技術・技法、同じく続いてきた原材料、産地がある、の5つです。2025年10月27日現在、244品目あります。
「伝統的工芸品」は、ふだん使う「伝統工芸」「伝統工芸品」とは別の、法律で決められた呼び方です。法律でいう伝統的工芸品は、国が指定した品目を指します。
「伝統的工芸品」と「伝統工芸品」の違い
「伝統的工芸品」という呼び方は、1974年(昭和49年)5月25日に公布された「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」(伝産法)で定められました。この法律でいう伝統的工芸品は、経済産業大臣が指定したものです。

「的」の1文字にも意味があります。伝統的工芸品産業振興協会は、原材料や技術・技法の主な部分が今日まで受け継がれていて、持ち味を保ちながら、時代に合わせた改良や製品づくりもされている工芸品、というほどの意味だと説明しています。
「伝統工芸品」は一般の呼び方で、伝産法で定めた呼び方ではありません。国の指定を受けていない工芸品にも使われます。
法律が定める5つの要件
伝産法第2条は、次のように定めています。
経済産業大臣は、産業構造審議会の意見を聴いて、工芸品であつて次の各号に掲げる要件に該当するものを伝統的工芸品として指定するものとする。

5つの要件と、伝統的工芸品産業振興協会による説明の要点は次のとおりです。
| 法律の言葉 | 意味(協会の説明の要点) | |
|---|---|---|
| 1 | 主として日常生活の用に供されるもの | ふだんの暮らしで使うもの。冠婚葬祭や節句など、年に数回の行事で家庭で使うものも含む |
| 2 | その製造過程の主要部分が手工業的 | すべて手作りでなくてよい。品質や形、持ち味を左右する工程は手作り。補助的な工程には機械を使える |
| 3 | 伝統的な技術又は技法により製造 | 「伝統的」は、およそ100年以上続いていること。持ち味を変えない改善は認められる |
| 4 | 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料 | 同じく、およそ100年以上使われてきた材料。手に入らなくなった材料は、持ち味を変えない範囲で同じ種類の材料に替えられる |
| 5 | 一定の地域において少なくない数の者が製造 | 産地として成り立っていること。10企業以上または30人以上が目安 |
協会は、技術と技法の違いも説明しています。技術と技法は切り離せないものですが、どちらかといえば、技術は一人ひとりの作り手の腕前や精度に関わり、技法は原材料の選び方から作り方までの、長い年月をかけて積み重ねられた方法に関わる、という説明です。
だれが、どうやって指定するか
指定するのは経済産業大臣です。経済産業省に置かれた産業構造審議会の意見を聴いたうえで指定します(伝産法第2条第1項)。
申し出るのは産地です。産地の組合(事業協同組合など)が、都道府県知事を通して経済産業大臣に申し出ます(同第3項)。産地が一つの市町村の中にあるときは、市町村長を通します。
指定は、伝統的な技術・技法、伝統的に使われてきた原材料、つくる地域の3つを定めて行います(同第2項)。指定の内容は官報で告示されます。協会によると、「経済産業大臣指定伝統的工芸品」と名乗るには、この3つをすべて満たしている必要があります。
最初の指定は1975年(昭和50年)2月17日で、南部鉄器、山形鋳物、村山大島紬、塩沢紬、高岡銅器、信州紬、木曽漆器、飛騨春慶、本場大島紬、久米島紬、宮古上布の11品目でした。指定はその後も続き、2017年1月以降だけで22品目が加わっています。いちばん新しい指定は、2025年(令和7年)10月27日の東京手彫り印章です。
244品目の内訳
2025年10月27日現在、伝統的工芸品は244品目です。協会の一覧では、品目を15の業種に分けています。

| 業種 | 品目数 |
|---|---|
| 織物 | 38 |
| 染色品 | 14 |
| その他の繊維製品 | 5 |
| 陶磁器 | 33 |
| 漆器 | 23 |
| 木工品・竹工品 | 33 |
| 金工品 | 16 |
| 仏壇・仏具 | 17 |
| 和紙 | 9 |
| 文具 | 10 |
| 石工品 | 4 |
| 貴石細工 | 2 |
| 人形・こけし | 10 |
| その他の工芸品 | 27 |
| 工芸材料・工芸用具 | 3 |
| 合計 | 244 |
いちばん多いのは織物の38品目で、陶磁器と木工品・竹工品の33品目が続きます。品目の正式な名前は、協会の「伝統的工芸品指定品目一覧」で確かめられます。たとえば有田焼の正式な名前は「伊万里・有田焼」です。漆器と伊万里・有田焼の確かめ方は、「漆器の見分け方」「伊万里・有田焼の見分け方」で説明しています。
伝統マークと伝統証紙
伝産法では、産地の組合などが、指定された伝統的工芸品に、指定を受けた品であることを表示できると定めています(第20条)。この表示に使われるものの一つが、伝統的工芸品産業振興協会が発行する「伝統証紙」です。証紙には、伝統の「伝」の字と日の丸を組み合わせた伝統マークが使われています(鹿児島県の説明による)。鹿児島県は、このマークを「伝産マーク」と呼んでいます。
産地の組合などが品物を検査し、合格したものに伝統証紙を貼る仕組みです。新潟県は、伝統マークを使った伝統証紙が貼られた工芸品は、産地組合などの検査に合格した経済産業大臣指定の伝統的工芸品だと案内しています。
協会は、伝統的工芸品にはよくできた類似品も多く、一般の消費者が見分けるのは難しいため、証紙が見分ける目安になると説明しています。ただし、表示は義務ではありません。協会の2025年度の事業報告書によると、この年に協会が発行した伝統証紙は13万5,610枚で、木工品・竹工品が5万枚だった一方、陶磁器と漆器は0枚でした。協会が発行する証紙の枚数は、業種によって大きく違います。証紙が貼られていない品が、伝統的工芸品ではないとは限りません。
国の指定と、県の指定は別のもの
伝統的工芸品産業振興協会によると、都道府県によっては、独自の基準で伝統的工芸品を指定しているところもあります。たとえば鹿児島県では、国が指定した3品目(本場大島紬、川辺仏壇、薩摩焼)とは別に、1987年度(昭和62年度)から県の決まり(要綱)にもとづいて工芸品を指定し、「県指定伝統的工芸品」として県のマークを使えるようにしています。
このように県の指定にも同じ言葉が使われるので、国の指定かどうかは協会の一覧で確かめます。たとえば江戸切子は国の指定品目ですが、薩摩切子は国の一覧にはありません。
数字で見る伝統的工芸品
熟練した作り手の認定は、毎年続いています。2025年度には、伝統的工芸品の製造に12年以上たずさわり、協会の試験に合格した88名が、新たに伝統工芸士に認定されました(伝統的工芸品産業振興協会)。
海外からの関心もあります。2025年に日本を訪れた外国人旅行者の8.3%が民芸品・伝統工芸品を買い、買った人は1人平均13,692円を使いました(観光庁)。この調査の「伝統工芸品」は一般の呼び方で、国が指定した品に限りません。
産業の規模は、2022年度で生産額が1,050億円(推定)、従事者が48,334人です(協会)。
KOGEI CODE は、国が指定する伝統的工芸品(244品目)をはじめとする工芸品を、作品と技法の両方から評価しています。評価の対象と流れは「評価と評価証書」にまとめています。
よくあるご質問
伝統的工芸品を簡単に言うと、どういうものですか
法律(伝産法)の5つの要件を満たすとして、経済産業大臣が指定した工芸品です。毎日の暮らしで使われ、主な工程が手作りで、およそ100年以上続く技術・技法と原材料を使い、産地でつくられているものが指定されます。
伝統的工芸品と伝統工芸品は同じですか
同じではありません。伝産法でいう伝統的工芸品は、経済産業大臣が指定した工芸品です。伝統工芸品は一般の呼び方で、国の指定を受けていない工芸品にも使われます。県が独自に指定した工芸品に「伝統的工芸品」という言葉を使う例もあるので、国の指定かどうかは協会の一覧で確かめます。
伝統的工芸品はいくつありますか
2025年10月27日現在、244品目です。いちばん新しい指定は、同じ日の東京手彫り印章です。
伝統的工芸品はだれが指定しますか
経済産業大臣が、産業構造審議会の意見を聴いて指定します。産地の組合(事業協同組合など)が、都道府県知事を通して申し出ます。
伝統的工芸品の一覧はどこで見られますか
伝統的工芸品産業振興協会のサイトで、業種別・都道府県別・指定順の一覧(PDF)が公開されています。2025年10月27日現在の244品目が載っています。
「伝統的」とは何年以上のことですか
伝統的工芸品産業振興協会は、およそ100年以上続いていることと説明しています。技術・技法と原材料の両方に当てはまります。
伝統証紙が貼られていない品は、伝統的工芸品ではないのですか
そうとは限りません。伝統証紙を貼るかどうかは任意です。気になるときは、協会の一覧で品目を確かめ、産地の組合に尋ねてください。
出典
- 伝統的工芸品産業の振興に関する法律 第2条・第20条(e-Gov法令検索)
- 経済産業省設置法 第6条・第7条(e-Gov法令検索)
- 伝統的工芸品産業振興協会「伝統的工芸品とは」
- 伝統的工芸品産業振興協会「法律(伝産法)」
- 伝統的工芸品産業振興協会「伝統的工芸品指定品目一覧(業種別)」2025年10月27日現在
- 伝統的工芸品産業振興協会「伝統的工芸品指定品目一覧(指定順)」2025年10月27日現在
- 伝統的工芸品産業振興協会「現状」
- 伝統的工芸品産業振興協会「2025年度 事業報告書」
- 新潟県「伝統的工芸品とは」
- 鹿児島県「鹿児島県の伝統的工芸品」
- 観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年 年次報告書」
(2026年10月20日確認)